207.コンタクトレンズのトラブル
こんにちは。池袋サンシャイン通り眼科診療所です。
秋も本格的になり、そろそろ寒くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回のテーマは「コンタクトレンズのトラブル」です。
便利で、快適なコンタクトレンズですが、誤解やまちがえた使い方が原因でトラブルが増加しているのも事実です。
特にソフトコンタクトレンズは眼に障害が起こっても痛みなどの自覚症状が比較的少ないため、
いつのまにか重い症状になっているケースが多いようです。コンタクトレンズの装用によるトラブルについて説明します。
● コンタクトレンズの使用による主な眼疾患
1.乾性角結膜炎(ドライアイ)、角膜乾燥症
コンタクトレンズが角膜を覆うことによって涙が角膜に行きわたらなくなり、乾燥しやすくなります。
ソフトコンタクトレンズは素材によって含水率が異なります。含水率が高ければ水分量が多く、酸素はこの水に溶け込むので、
含水率が高いほど酸素がおおく含まれています。レンズの水分量を維持するために眼の表面の涙の水分を吸収し、
涙が角膜に十分に行きわたらなくなって酸素や栄養が不足し、ドライアイに拍車をかけます。ドライアイにはどのレンズが良いかというと、
理論上は低含水のレンズが良いことになります。高含水のレンズは乾燥すると涙を吸い上げてしまったり、極度に乾燥すると形状が変わることもあります。
2.角膜炎・角膜潰瘍
角膜の表面(上皮)が、コンタクトレンズの装用による圧迫が原因で酸素不足になり、むくみやただれが生じます。角膜びらんの症状が悪化すると、
角膜潰瘍になります。コンタクトレンズが汚れていたり、長時間の使用によって涙が不足すると、角膜の表面に傷がつき、細菌やウイルスに感染して炎症が起きます。
4.巨大乳頭結膜炎
まぶたの裏側に乳頭ができます。原因として、コンタクトレンズについた汚れ、特に変性したタンパク質の汚れに反応するケースが多いです。似たような症状の疾患として、アレルギー性結膜炎があります。かゆみを伴い、コンタクトレンズがずれるようになり、角膜を痛めている場合は、ショボショボして、めやにが出る症状が起こります。
5.アカントアメーバ角膜炎
アカントアメーバで汚染されたコンタクトレンズを使用することによって生じます。角膜の濁りや充血、強い痛みが起きます。
6.角膜新生血管
コンタクトレンズを使用して角膜が酸素不足になると、角膜の周囲から中央に向けて血管が侵入してきます。
7.角膜化学熱傷
消毒操作後に中和操作を行うタイプでは、消毒と中和が2段階に分かれているので、
中和するのを忘れてしまうとコンタクトレンズに過酸化水素が染み込んだままとなり、
これによって薬剤性の角膜化学熱傷を起こします。痛みや充血、目やに、まぶしさが起きます。
8.角膜内皮細胞減少
コンタクトレンズを適切に使用していても、角膜の内皮細胞という透明性を維持する細胞に影響を与え、
内皮細胞の形態を変化させます。これは慢性的な酸素不足が原因と言われています。
角膜内皮細胞は一度障害を受けると元に戻りません。
正常な働きをさせ角膜を透明に保つためには少なくとも1500個/㎜2 は必要とされています。
従ってそれ以下になると、コンタクト装用は中止したほうがいいとされており、後に白内障の手術ができなくなる可能性があります。
● 上記 眼疾患の原因をまとめてみると
1.コンタクトレンズそのものによる原因
コンタクトレンズ自身の酸素透過性が低い場合、低酸素が原因で角膜新生血管の侵入や角膜内皮細胞障害などを起こす可能性があります。
2.コンタクトレンズの装用者の装用方法に問題のある場合
長時間装用をすると、眼の表面が酸素不足になり、傷がついたり、細菌感染を起こしやすくなります。
使用期限を超えてコンタクトレンズを使用し、汚い手で扱ったり、1日使い捨てタイプ以外のコンタクトレンズでは洗浄が不十分であるために、
レンズに付着したままの汚れが蓄積され、アレルギーを発症する場合などが考えられます。
汚れたコンタクトレンズを入れたために汚れが角膜に作用し角膜上皮障害を発症し、
そこに微生物が作用して角膜感染症を発症するといった場合があります。
3.ケア用品やケア方法に問題のあるもの
ケア用品の消毒力や洗浄力の弱さに加えて、ケア用品の不適切な使用方法によって角膜感染症が発症する可能性があります。
また、水道水での洗浄で角膜にできている傷からアカントアメーバが入り込み、角膜炎を起こしてしまうことがあります。
ケースを水洗いして十分に乾燥させていないまま保存液を入れるのも良くありません。アカントアメーバが繁殖してしまうからです。
4.手軽に購入できるコンタクトレンズ
コンタクトレンズが日用品化し種類が大変多くなってしまった昨今、処方箋なしで自分の眼に合わない値段が
安価なコンタクトレンズを装用してしまったために、たとえば、ドライアイの症状が出やすくなってしまったり、
アレルギー性結膜炎の症状が出やすくなってしまうこともあります。
●コンタクトレンズによるトラブルを防ぐには
上記のうち最も多い原因は、上記2にある、長時間の装用です。装用時間について医師の指示を守りましょう。
また、レンズの洗浄不足による汚れや傷なども原因になるため、ハードのレンズは片面30回以上、
1日タイプ以外のソフトのレンズは片面20回以上のこすり洗いをしましょう。また常用タイプ(使い捨てでないタイプ)のソフトコンタクトレンズは、
一般的に1年から1年半ほど使用できるので、毎日の洗浄に加えて定期的にタンパク除去が必要です。
酵素洗浄剤や塩素系洗浄剤など専用のケア用品を使用します。
上記4のごとく、眼科専門医のいる医療機関で十分眼の検査を受けてから自分の眼に合ったコンタクトレンズの処方を
受けて処方されたレンズを装用するようにすることも大切です。
充血や痛み、目の違和感を見逃さないことも重要です。特に、充血は角膜に傷がついている証拠なので、
ほうっておくと細菌感染で角膜潰瘍を起こし、失明に至る危険性もあります。充血したらすぐにレンズの使用を中止し眼科を受診しましょう。
使うときは手を清潔にしたり、連続装用を許可されていない人は、眠るときは必ずレンズを外しましょう。
また、目の具合が悪いときは無理して使い続けるのはやめ、メガネを使い、眼科を 受診しましょう。
以上のように、少しでも眼に異常を 感じたら、はやめに眼科を受診することが大切です。
当院では、当院で処方した方以外の方のコンタクトトラブルの診察もしておりますので、お気軽にご来院ください。
●一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
●無断での記事転載はご遠慮ください。
●本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
※ すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。
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院長: 堀 好子
(日本眼科学会認定 眼科専門医 医学博士)所属学会:日本眼科学会会員、日本眼科医会会員、日本角膜学会、 日本眼科手術学会、日本眼内レンズ屈折手術学会
経歴 昭和61年 岩手医科医学部 卒
平成2年 岩手医科大学大学院 卒平成3年 岩手県立大船渡病院 眼科医長
平成5年 岩手医科大学眼科助手
平成5年 ハーバード大学スケペンス眼研究所勤務
平成9年1月 東京歯科大学眼科勤務
平成9年6月 南青山アイクリニック勤務
平成20年 東京歯科大学市川総合病院勤務平成22年4月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 管理医師就任
主な論文 The three-dimensional organization of collagen fibrils in the human cornea and sclera.(旧姓Komai)
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常勤: 新川 恭浩
(日本眼科学会認定 眼科専門医)所属学会:日本眼科学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本網膜硝子体学会、日本眼科手術学会
経歴 平成13年 熊本大学医学部 卒
平成14年 京都大学医学部 眼科学教室入局
平成14年 島田市立島田市民病院 勤務
平成20年 高松赤十字病院 勤務
平成22年 公益財団法人田附興風会 北野病院 勤務
平成26年10月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 勤務 -
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