796.ヘルペスによる眼疾患

こんにちは、池袋サンシャイン通り眼科診療所です。
紫陽花が雨に映える季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今日のテーマは「ヘルペスによる眼疾患」です。

 

ヘルペスとは、ヘルペスウイルスに感染することによる皮膚や粘膜の水疱、ただれの俗称のことです。
人に感染するヘルペスウイルスには8種類ありますが、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因の単純疱疹と、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因の帯状疱疹のことを「ヘルペス」と呼びます。

 

ヘルペスはどのように感染、発症するのか
ヘルペスウイルスの感染方法には特徴があります。ほとんどの人が子供の頃ヘルペスウイルスに感染しています。ヘルペスウイルス感染者の約1割は結膜炎を起こしますが、約9割は症状がないままで 感染に気づきません。

感染後は、目の奥にある三叉神経に住み着きます。多くの人は、症状が出ない状態のまま一生を終えます。
しかし、ストレス・疲れ・発熱などがきっかけとなり、ヘルペスウイルスが角膜の表面に出てくると、約0.05%の割合で角膜ヘルペスが発症します。

他の疾患と異なり再発を繰り返すことが特徴で、失明率が高い病気です。 他の人に伝染することはほとんどありませんが、ウイルスに対して抗体を持っていない乳幼児に対しては注意が必要です。自分の目を触った手で乳幼児に触れると、感染させる恐れがあります。

 

次にヘルペスによって引き起こされるが眼疾患を2つご紹介します。

 

1.単純ヘルペス角膜炎
単純ヘルペス角膜炎とは単純ヘルペスウイルスによる角膜感染症です。通常、角膜表層を侵しますが、ときに角膜実質(角膜より深い層)または角膜の内側の表面(角膜内皮)や前房、虹彩を侵すこともあります。

 

・症状
異物感、涙が出る、羞明(強い光で生じる目の不快感や痛み)、充血や視力低下などがあります。また通常片眼性でことが特徴です。

 

・分類
角膜炎のおこる場所によって、上皮型、実質型、内皮型と分けます。 よくある上皮型と実質型について説明します。
上皮型…角膜の外層 上皮層に症状が出ます。潰瘍の形から、樹枝状角膜炎と呼ばれます。確定診断をするには、病変部をこすり取ってウイルスの有無を確認する必要がありますが、 特徴的な潰瘍の形であるため、細隙灯顕微鏡の観察で ほぼ診断できます。

実質型…角膜の中心層 実質層でウイルスに対する免疫反応が起こり、炎症が起こります。 炎症が起こった部分の角膜が 円く腫れて濁ることから、円板状角膜炎といいます。

 

・主な治療方法
薬による治療が中心です。処方に従って、きちんと治療を続けることが大切です。
上皮型の場合…ヘルペスウィルスの増殖を抑えるために抗ウィルス薬を用います。 また細菌感染が起きないように抗菌薬の点眼も使います。

実質型の場合…ウィルス増殖と炎症を抑えるためにステロイドと抗ウィルス剤を使います。 ステロイド薬は正しく使用しないと、角膜の病変が悪化する場合があります。角膜に濁りが残ると視力回復が難しくなります。また、視力が著しく低下した場合、角膜移植が必要となることもあります。


2.眼瞼ヘルペス
眼瞼ヘルペスは唇やその周囲に小さな水ぶくれが出来る病気“口唇ヘルペス”の原因である単純ヘルペスウイルスによるものと、水痘・帯状ヘルペスウイルスによるものに分けられます。
目の部分に感染すると、ヘルペス性眼瞼炎を引き起こします。単純ヘルペスウイルスによるものは、風邪をひいたり、疲れがたまって免疫力が落ちたりした際に、三叉神経に感染したウイルスが再活性化し、増殖することで再発しやすくなります。乳幼児や思春期の子どもによくみられます。
1型と2型がありますが、眼瞼炎や角膜炎は1型による場合が多いです。

 

・症状
眼瞼に痛み、発赤を伴う小さい水疱、腫れなどの症状が現れ結膜炎や角膜炎を併発することもあります。

・主な原因
単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状ヘルペスウイルスなどの感染が原因です。
一度感染し、その後症状が出ない状態が続いても、免疫力が落ちていたり、疲れがたまっていたりすると

・治療法
治療には抗ウイルス剤が効果的です。細菌による混合感染の予防のため抗菌剤の点眼も併用する場合があります。ぶどう膜炎を併発したり重症化してしまった場合には内服治療を行うことがあります。

ヘルペスウイルスは、症状が消えても神経の奥に潜伏していて、しばしば再発しますが、その都度きちんと治療することが大切です。
再発を完全に防ぐ方法はありませんが、発症の誘因と思われる体調不良などを起こさないよう、規則正しい生活を送ることが予防になります。

 

●上記は一般的な説明です。症状が気になる方は受診の上、医師に相談して下さい。
●一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
●無断での記事転載はご遠慮ください。
●本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
※すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。

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