132.樹枝状角膜炎の鑑別診断
こんにちは、池袋サンシャイン通り眼科診療所です。
新緑の季節ですね。 皆様いかがお過ごしですか
今回のテーマは「樹枝状角膜炎の鑑別診断」です。
感染性角膜炎の原因として、ヘルペス、細菌性、真菌性、アカントアメーバなどがあげられます。
とくにヘルペス、アカントアメーバによる細菌感染は所見が似ていますのでご説明いたします。
●アカントアメーバ角膜炎
アメーバが感染して発症する角膜炎、1974年にNagingtonらが報告した、土壌や淡水に生息し、
外傷をきっかけに感染するといわれていますが、むしろコンタクト装用者を中心に患者数が増加しています。
・症状
1)疼痛と充血
2)ごく初期の異物感は痛みへと変化し、それに伴って充血が強まります。
3)痛みは激しい疼痛に変わり、強い流涙を生じますので、眼瞼腫脹を伴います。
4)病気が進むと瞳孔中央に生じる病巣のため視力低下をきたします。
・原因
アカントアメーバが外傷などの上皮障害部位に付着増殖して起こる。
ソフトCL装用者で、消毒が十分でなかったり、ケアに水道水を使用するなど、誤った使い方が背景にあることが多い。
・治療
適応のある薬剤がないのでアゾール系抗真菌薬や消毒薬を全身および局所に用いる。ステロイド点眼は使用しない。
細菌混合感染対策として、抗菌点眼薬を併用します。
●角膜ヘルペス上皮型(樹枝状角膜炎)
角膜の一番外側にある上皮層でウイルスが増殖し炎症が起こり、潰瘍ができます。
単純ヘルペスウイルスによる角膜の感染と、それに対する免疫反応によって起こる病気で
角膜ヘルペスは通常、片眼性で、再発を起こすのが大きな特徴です。
・症状
1)異物感・充血・まぶしい・流涙など
2)病変が瞳孔領に生じた場合は視力が低下します。
3)強い痛みを訴えることは少ない
・原因
単純ヘルペスウイルスは、角膜ヘルペスを発症する時に外から感染するのではなく、何年も前にすでに感染しています。
知らない間に感染していることが多く、ほとんどが体のどこかの神経節にこのウイルスをもっています。
眼の奥にある、角膜の知覚を支配している三叉神経節にも、このウイルスが潜伏感染していることがあり、
眠った状態のウイルスがストレスや体調不良、熱発、気温の低下などが引き金となって目覚め、
角膜の表面に出てくることによって角膜ヘルペスが発症します
・治療
角膜ヘルペス上皮型(樹枝状角膜炎)の治療は、抗ウイルス薬の点眼薬を用い、約2周間ほどでよくなります。
単純ヘルペスウイルスに対する特効薬の軟膏を使用します。
●診断のポイント
鑑別にはフルオレセイン染色所見(フルオロセインという蛍光色素を使って行う染色検査です。)
角膜に傷ができている部分がフルオロセインで染色され、コバルトブルーの光が当たった時に緑色に発光します。
細隙灯顕微鏡検査により、角膜に樹枝状病変を見た場合、
まず、これが単純ヘルペスウィルスによる樹枝状角膜炎であるかどうかを
見定めることが重要であります。
1)樹枝状角膜炎の特徴(角膜ヘルペス上皮型)
① 丸枝分かれ、ある程度幅がある。
② 末端が先細りにならず、膨らんだ状態である。
③ 上皮内浸潤;辺縁部の上皮は盛り上がり、浸潤を伴うため、樹枝状病変が明確に縁取られたように見える。
④ 病変部以外の上皮は正常である。
2)偽樹枝状を示す疾患の特徴(アカントアメーバ角膜炎)
① 先細わかれ、幅が少ない。
② 末端が先細りになり、膨らんでいない状態である。
③ 上皮内浸潤を形成しない。
などが挙げられます。
予後
黒目に病原体が感染して発症する角膜感染症は、重症になると失明することがあります。
強い眼の痛みや充血、大量の目やになどの症状に加えて、視力低下、光がまぶしく感じるような場合は、
急速に症状が進行することがありますのですぐ眼科を受診しましょう。
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院長: 堀 好子
(日本眼科学会認定 眼科専門医 医学博士)所属学会:日本眼科学会会員、日本眼科医会会員、日本角膜学会、 日本眼科手術学会、日本眼内レンズ屈折手術学会
経歴 昭和61年 岩手医科医学部 卒
平成2年 岩手医科大学大学院 卒平成3年 岩手県立大船渡病院 眼科医長
平成5年 岩手医科大学眼科助手
平成5年 ハーバード大学スケペンス眼研究所勤務
平成9年1月 東京歯科大学眼科勤務
平成9年6月 南青山アイクリニック勤務
平成20年 東京歯科大学市川総合病院勤務平成22年4月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 管理医師就任
主な論文 The three-dimensional organization of collagen fibrils in the human cornea and sclera.(旧姓Komai)
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常勤: 新川 恭浩
(日本眼科学会認定 眼科専門医)所属学会:日本眼科学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本網膜硝子体学会、日本眼科手術学会
経歴 平成13年 熊本大学医学部 卒
平成14年 京都大学医学部 眼科学教室入局
平成14年 島田市立島田市民病院 勤務
平成20年 高松赤十字病院 勤務
平成22年 公益財団法人田附興風会 北野病院 勤務
平成26年10月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 勤務 -
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