99.ドライアイとコンタクトレンズ
こんにちは。池袋サンシャイン通り眼科診療所です。
記録的に長かった猛暑もそろそろ終りを告げようとしていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
今週のテーマは「ドライアイとコンタクトレンズ」についてです。
コンタクト使用者に多いドライアイ
ドライアイ(角膜乾燥症、乾性角結膜炎)は、涙の量が足りなくなったり、涙の成分が変化することによって、目の表面に障害(傷)が生じる目の病気です。
空調で乾燥しがちなオフィス等でパソコンを長時間使用している人などに発生する事が多い疾患ですが、コンタクトレンズ使用者は特に発生頻度が高くなると言われています。
一説にはコンタクトレンズ使用者の約4割がドライアイとも言われています。
なぜコンタクトレンズ使用者にドライアイが多いかについては、以下の理由が考えられています。
①涙の循環が阻害される
目の表面にはまばたきの度に新鮮な涙が運び込まれています。しかしコンタクトレンズで角膜に蓋をした状態になると、まばたきによる涙の循環率はぐっと低下し、ハードコンタクト装用時では裸眼の約20%、ソフトコンタクト装用時では約2~3%に低下します。
②コンタクトレンズによって涙が奪われる
現在、コンタクトの主流となっているソフトコンタクトレンズはレンズ自体が一定の水分を含んでいます。レンズに水を含ませることによってレンズの柔らかさを保っています。ところが装用後、時間がたつとレンズに含んでいる水分が蒸発していきます。するとレンズは目の表面から涙を奪って水分量を保とうとします。そのためソフトレンズは長時間装用すると乾燥感が強くなります。
③角膜の知覚が鈍くなる
コンタクトレンズは角膜上に載せて使いますが、使い始め当初は異物感を感じても、使っているうちに慣れてきて異物感が少なくなってきます。これが逆に角膜の異物に対する知覚を低下させ、涙の量が減ったり、質が変化します。それに併せてまばたきの回数も減ってしまいます。パソコンなどの画面を見続けるとまばたきが少なくなる事が知られていますが、コンタクトレンズを付けていると、よりまばたきの回数が減る可能性があります。
ドライアイ以外の疾患にも罹りやすくなる
目の乾きやすい人がコンタクトを使った場合、ドライアイ以外にも様々な疾患や障害が発生しやすくなります。
・ 角膜表面の傷が広がる⇒角膜炎や角膜潰瘍等
・ 酸素や栄養分を運ぶ力が下がる⇒角膜血管新生、角膜内皮障害等
・ 細菌やアレルギーに対する抵抗力が下がる⇒細菌性結膜炎、アレルギー性結膜炎等
・ 潤滑液としての働きが下がる⇒角膜びらん、表層角膜症等
ドライアイとアレルギー性結膜炎の相関関係
コンタクト使用者はレンズに汚れや花粉等が付着する事が多くなるため、アレルギー性結膜炎や巨大乳頭性結膜炎を起こすリスクが高くなりますが、それらの結膜炎にかかると炎症のため涙を目の表面に溜めておく事が難しくなるためドライアイを誘発しやすくなります。
逆にドライアイの人は、涙による異物に対する目の防御機能がもともと低下しているため、アレルギー性結膜炎などに罹りやすいと考えられています。
アレルギー性結膜炎に罹った事を契機にドライアイとなるケースや、軽度のドライアイだった人がアレルギー性結膜炎によって重症化するケースもあります。ドライアイとアレルギー性結膜炎などの疾病は相関関係にあると考えられています。
ドライアイに向いたコンタクトレンズとは
ドライアイの場合、本来ならコンタクトレンズよりもメガネの方が良いと考えられますが、コンタクトレンズを選ぶ場合、乾燥感を抑えられるもので、かつアレルギー性結膜炎などの相関関係にある疾病を考慮すると汚れにくいものがベストという事になるかと思います。
① ハードコンタクトレンズ
ハードコンタクトレンズは、レンズ自体の含水率がほとんど0となっています。ソフトコンタクトレンズと比べ目から涙を奪う心配がほとんどないと言えます。また角膜上の涙に浮いた状態で装用するためソフトレンズよりも涙液の循環が良い点も目の乾燥を抑える上では有効です。
ただし、数年間使い続けるため、日ごろのケアが悪いとレンズが汚れてしまい、ドライアイから他の症状に繋がる可能性が高くなるので注意が必要です。
② 低含水ソフトコンタクトレンズ
ソフトコンタクトレンズをレンズに含まれる水の量で分けると、含水率50%以上の高含水タイプと含水率50%以下の低含水タイプの2つになります。
高含水タイプは柔らかいため付け始めの装用感が良いのですが、もともとの水の量が多い分、時間がたった時に蒸発する水の量も多くなり、それだけ多くの涙がレンズに奪われる形になります。
低含水タイプはソフトレンズの中では乾きにくく汚れにくいといったメリットがありますが、レンズ越しの酸素透過率がやや低めのため、長時間装用する事が多い人の場合、目の負荷が高くなる可能性があります。
シリコンハイドロジェルという新しい素材のレンズの場合、低含水でありながら、酸素の透過率が従来の素材のものより3倍程度高く、長時間装用でも安心なレンズとなっています。
1dayタイプのシリコン素材がベスト
ドライアイの場合、ハードコンタクトも良いのですが、汚れを考えると、1日ごとに使い捨てる低含水のソフトコンタクトレンズがベストと考えられます。衛生面では1dayタイプのソフトコンタクトレンズが一番です。
コンタクトレンズの装用時間が1日平均12時間以上になる人が多い事を考えると、酸素透過性の高いシリコン素材のものが安心です。1dayタイプのシリコン素材のコンタクトは現状ではジョンソン&ジョンソン社の「1dayアキュビュー・トゥルーアイ」のみとなっています。
ドライアイの方に向いたコンタクトレンズといっても目の状態によりますので、必ず眼科で受診の上、コンタクトレンズを処方してもらうようにしてください。
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院長: 堀 好子
(日本眼科学会認定 眼科専門医 医学博士)所属学会:日本眼科学会会員、日本眼科医会会員、日本角膜学会、 日本眼科手術学会、日本眼内レンズ屈折手術学会
経歴 昭和61年 岩手医科医学部 卒
平成2年 岩手医科大学大学院 卒平成3年 岩手県立大船渡病院 眼科医長
平成5年 岩手医科大学眼科助手
平成5年 ハーバード大学スケペンス眼研究所勤務
平成9年1月 東京歯科大学眼科勤務
平成9年6月 南青山アイクリニック勤務
平成20年 東京歯科大学市川総合病院勤務平成22年4月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 管理医師就任
主な論文 The three-dimensional organization of collagen fibrils in the human cornea and sclera.(旧姓Komai)
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常勤: 新川 恭浩
(日本眼科学会認定 眼科専門医)所属学会:日本眼科学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本網膜硝子体学会、日本眼科手術学会
経歴 平成13年 熊本大学医学部 卒
平成14年 京都大学医学部 眼科学教室入局
平成14年 島田市立島田市民病院 勤務
平成20年 高松赤十字病院 勤務
平成22年 公益財団法人田附興風会 北野病院 勤務
平成26年10月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 勤務 -
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