77.バセドウ病と目
こんにちは、池袋サンシャイン通り眼科診療所です。
暖かくなり過ごしやすい季節になってきましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
今週のテーマは「バセドウ病と目」です。
バセドウ病の説明をさせて頂くにあたり甲状腺と甲状腺ホルモンについて説明させていただきます。
甲状腺とは喉の辺りにある甲の字のような形をした器官で、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンとは細胞の新陳代謝を促したり、身体活動や精神活動を活発にします。
バセドウ病とは甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。女性に多く(男性の約4倍の頻度)、20歳代と40歳代に発病のピークがあります。
<原因>
自己抗体の影響が原因(本来はからだの外から侵入してくる細菌やウイルスを無害化する存在である「抗体」が、自分の正常な組織に悪く働いてしまう)と考えられていますが、すべてが解明されているわけではありません。
<症状>
甲状腺が大きくなるために首が腫れます。そして新陳代謝や身体・精神活動が高まるため、脈が早くなり、指が震えたり、体重が減り、下痢をしたり、汗をかきやすくなり、イライラします。また下で説明させて頂くような目にも症状が出てきます。
<バセドウ病による目への病気>
バセドウ病による目の病気は大きく分けて、バセドウ病そのものが原因で目に現れる症状の原発性症状といったん生じた目の異常が原因となり続発的に現れる続発性症状があります。
~原発性症状~
・ 眼瞼後退 眼瞼とはまぶたのことです。過剰に分泌されている甲状腺ホルモンが平滑筋を刺激して、その影響でまぶたを上下する筋肉が収縮するために起こる現象が「眼瞼後退」です。とくに上まぶたの筋肉が収縮しやすく、まぶたが吊り上がったようになります。
・ 眼球突出 眼球が収まっている頭蓋骨の空洞を眼窩といいます。眼窩の内側は、眼球を動かす「外眼筋」という筋肉と、その周囲にある「眼窩脂肪」などによって埋められています。
バセドウ病では外眼筋や眼窩脂肪に炎症が起きます。すると、炎症による腫れのため にその体積が増え、眼窩内圧(眼窩内の圧力)が高くなります。その結果、眼球が前へ 押し出されて「眼球突出」が起こります。
~続発性症状~
・ まぶたやまつげの異常 脂肪や涙腺の炎症のためにまぶたが腫れたり、逆さまつげのようになったりします。
・ 結膜の充血・むくみ 眼窩内圧が高くなることや、眼瞼後退の影響で、結膜に充血やむくみが起きます。
・ ドライアイ 眼瞼後退でまぶたが完全には閉じなくなるために、角膜や結膜が乾燥して傷がつきやすくなることがあります。甲状腺機能異常による涙の分泌機能低下の影響もあるとされています。
・ 複視〈ふくし〉 外眼筋(左右に六つずつあります)の腫れのため眼球運動が悪くなり、視線が一点に合わず物が二つに見える「複視」になります。
・ 視神経の障害 眼窩内圧が上昇すると、眼球後方から脳へと伸びている視神経や眼球へ血液を送っている血管も圧迫されます。それにより、視力が低下したり、視野が欠けたり暗くなったりすることがあります。視神経は完全に障害されてしまうと回復しないので、そうなる前に治療しなければいけません。中年以降の人では眼窩の組織が固いため、複視や視神経障害が起きやすい傾向があります。
・ 眼精疲労 ドライアイや複視、視力低下などの程度が軽いときは、単なる眼精疲労として自覚されます。
<主なの治療方法>
~原発性症状に対する治療~
平滑筋の働きを抑えるα〈アルファ〉遮断薬の点眼や筋肉を弛緩させるボツリヌス毒素の注射をします。
さらに放射線治療もあります。放射線治療の副作用で、こめかみの辺りの毛が抜けることがありますが、数カ月すると元に戻ります。
手術としては、眼窩減圧〈げんあつ〉手術があります。眼窩を構成している骨の一部を削り取り、眼窩内部のスペースを拡大することで内圧を下げる方法です。ほかの治療を行っても眼球突出が改善せずに角膜や結膜などに重い症状があるとき、または眼窩内圧上昇で視神経障害の後遺症が心配されるときに、この手術を検討します。合併症で複視になることがあります。
~続発性症状に対する治療~
まぶたやまつげの異常に対しては、まぶたの筋肉を伸ばして整える手術を行います。結膜の充血やむくみ、ドライアイには、それぞれの治療薬を点眼します。複視は、外眼筋の位置を調節する手術で治療します。
これら続発性症状に対する手術は通常、炎症がひいて病状が落ち着いてから行います。原発性症状が変化しているときに行うと、術後に眼窩やまぶたの状態が変わって、症状がまた悪化してしまう可能性があるからです。強い続発性症状がある場合は別で、早めに手術します。
<当院での検査及び治療>
当院の治療としては、抗炎症薬による薬物治療、ステロイド薬・非ステロイド薬を使用します。症状によっては、大学病院等へ紹介する場合がございます。
<注意すべきこと>
バセドウ病は良くなったり悪くなったりすることはあるものの、一般的には時間とともに改善する病気です。
多くの方が一番気にされる眼球突出についても、きちんと治療すれば大部分の患者さんは、それほど目立たないレベルに治ります。
またタバコを吸う人は吸わない人よりもバセドウ病になりやすいうえに、目の病気ではさらにその差が大きく出ることがわかっています。
●一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
●無断での記事転載はご遠慮ください。
●本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。
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院長: 堀 好子
(日本眼科学会認定 眼科専門医 医学博士)所属学会:日本眼科学会会員、日本眼科医会会員、日本角膜学会、 日本眼科手術学会、日本眼内レンズ屈折手術学会
経歴 昭和61年 岩手医科医学部 卒
平成2年 岩手医科大学大学院 卒平成3年 岩手県立大船渡病院 眼科医長
平成5年 岩手医科大学眼科助手
平成5年 ハーバード大学スケペンス眼研究所勤務
平成9年1月 東京歯科大学眼科勤務
平成9年6月 南青山アイクリニック勤務
平成20年 東京歯科大学市川総合病院勤務平成22年4月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 管理医師就任
主な論文 The three-dimensional organization of collagen fibrils in the human cornea and sclera.(旧姓Komai)
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常勤: 新川 恭浩
(日本眼科学会認定 眼科専門医)所属学会:日本眼科学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本網膜硝子体学会、日本眼科手術学会
経歴 平成13年 熊本大学医学部 卒
平成14年 京都大学医学部 眼科学教室入局
平成14年 島田市立島田市民病院 勤務
平成20年 高松赤十字病院 勤務
平成22年 公益財団法人田附興風会 北野病院 勤務
平成26年10月~ 池袋サンシャイン通り眼科診療所 勤務 -
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